5月8日の誕生花
「シャクナゲ」
・シャクナゲ科
・英名:〈Rhododendron〉
・別名:シャクナンゲ
*花言葉*「荘厳」
「シャクナゲ」
・シャクナゲ科
・英名:〈Rhododendron〉
・別名:シャクナンゲ
*花言葉*「荘厳」
借りていたDVDのことを思い出し、返却日を確かめてみると、あと1日しかありません。
あわただしく観終わったころには、すでに夜の11時過ぎ。自転車を飛ばして、なんとか今日じゅうに間に合いました。
必死になってペダルを踏んできたので、シャツが汗ばんでいます。ジャケットを脱いで自転車のカゴに放りこむと、家へと向かいます。
ほんの一月まえまであんなに寒かったのに、いまでは吹く風も心地よいものでした。
暑くもなく、寒くもない。まるで、天然のエアコンです。もしも極楽というものがあるのなら、きっとこんな陽気なのでしょう。
行きは気持ちが焦っていて気がつきませんでしたが、ほのかにジンチョウゲが香ります。そういえば、もう急ぐ必要などないのだと気づき、歩くよりも少し速い速度で自転車を漕ぎます。
暗い街のなか、ポツンポツンと立つ街灯の明かりが、世界をにわかに不思議な光景へと塗り変えます。
レンガを敷きつめた遊歩道、サツキやアヤメを植えたプランター、赤、白と交互に並ぶハナミズキ、それらの何もかもが、まるでおとぎの国のように懐かしく目に映ります。
いま感じているこの胸騒ぎは、不安で湧きあがるあのいやな感じとはまったくの別ものでした。そわそわと落ち着かなくなるのはどちらもいっしょですが、踊りだしたくなるような、自然と微笑みたくなるような、くすぐったい気持ちなのです。
最後にこの感覚を味わったのは、いったい、いつだったろうか、と思いめぐらせました。
仲のいい友だちとどこかへ旅行に出かけたときだったかな、いや、もっと昔、家族そろって遊園地に行ったときだったかもしれません。
ふいに、街そのものが、こども部屋のような気がしました。いるだけでほっと安心できる、自分だけの王国。
こども部屋には強力な魔法がかかっていて、あらゆるものから守られているのです。隅から隅まで知りつくしているし、何をしようと誰にも口出しのできない、絶対領域なのです。
いつもはただ通りすぎるだけの道が、この日にかぎり、親しみのこもった夢の回廊となりました。
あの電柱もこのコンクリートの塀も、わたしとすっかり融合しているのです。もしも、電信柱のてっぺんから街を見渡したいと願えば、たちまちそれは叶って、次の瞬間には暗く広がる無数の屋根を目にすることでしょう。
夜をわが世と決めているネコになって、塀から塀、路地から路地をさまよい歩くのも楽しそうです。
闇のなかで目をきらきらと輝かせて、どんなささいな面白いことも見逃すつもりはありません。
さぞや、愉快な冒険になるでしょうね。
ときおりすり寄ってくる風は、ついでに思い出も運んでくるらしく、記憶の底をチクリ、チクリとつつきます。
ずっと昔、あんなことがあった、こんなこともあった、と次から次へと情景が浮かんでくるのです。
この季節だけ起きる、束の間の蜃気楼。
いく度か雨が降れば、もうまもなく梅雨がおとずれます。やがて雲が切れ、ついには白日夢のような夏がはじまるのです。
厳しかった冬が眠りにつき、うだるような夏が目を醒ます、ちょうど境こそ、春の夜なのかもしれません。
豪快で奔放な2つの季節が見る夢に、どうやら、わたしは巻きこまれてしまったようです。
わたしはとうとう自転車を降り、押して歩きだしました。
できるなら、このままずっと巻きこまれたままでいたい、そう切望しながら。
flower0508.xlsx
シャクナゲ
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